買替諸費用 加古川の弁護士が解説

 買替諸費用とは、被害車両に代えて新車を購入した場合に要する諸費用ではなく、被害車両と同ーの車種・年式、型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得した場合に要する諸費用をいいます。
 この種々の諸経費としては、自動車取得税、自動車重量税、自動車税、消費税、自賠責保険料、リサイクル費用、登録手数料、車庫証明費用、納車手数料、廃車費用などがあります。問題は、どの範囲が損害と認められるのかです。
 買替のため必要になった登録、車庫証明、廃車の法定の手数料相当分及びディーラー報酬部分(登録手数料、車庫証明手数料、納車手数料、廃車手数料)のうち相当額並びに自動車取得税については損害として認められます。なお、事故車両の自賠責保険料、新しく取得した車両の自動車税、自動車重量税、自賠責保険料は損害とは認められないが、車両本体価格に対する消費税相当額、事故車両の自動車重量税の未経過分(「使用済自動車の再資源化等に関する怯律」により適正に解体され、永久抹消登録されて還付された分を除く)は、損害として認められます。
 ・自動取得税
 これは、自動車を取得した時に取得価額を基準として課税される税金で、税率は車種や仕様により定められています。
 買替えに際して支出した自動車取得税は損害と認められます。事故車両を廃車しても何ら還付を受けることができないため自動車の取得に伴う支出といえるからです。
・自動車重量税
こちらは、車検を受ける自動車や車両番号の指定を受ける軽自動車を課税対象として(自動車重量税法3条)、自動車検査証の交付や車両番号の指定を受ける者に課す国税です。税率は、自動車・軽自動車の車種、車両重量別、車検期間別に定額で規定されています(同法7条)。
 自動車検査証の交付等を受ける者は、その自動車検査証の交付等を受ける時までに(同法7条)、車両番号の指定を受ける者は、その車両番号の指定を受ける時までに(同法8条)、国に納付します。
 買替えのために支出した自動車重量税が損害となるかについては、これを背定した裁判例がある一方で、「本件事故と相当因果関係のある損害として認められるのは、原告車両と同等の中古車両を購入する場合に要する費用であって、これを超える新車購入に係る費用は認められないから、新車購入を前提とする自動車重量税については、本件事故と相当因果関係のある損害としては認められない。」として否定した裁判例もあります。また事故車両の未経過分の自動車重量税については、これを否定した裁判例もありますが、事故車両の自動車検査証の有効期間に未経過分があったとしても、それを還付する制度がないことを理由に「事故時における自動車検査証の有効期間の未経過分に相当する金額は、事故による損害というべきである」として未経過分の自動車重量税を損害と認めた裁判例があります。
自動車重量税は、中古車には課税されないものであることから、中古車の場合には買替費用として損害とはなりません。また、事故車両を廃車にして買替えをした場合には、使用済自動車にかかる自動車重量税の廃車還付制度により、要件を満たせば未経過分の自動車重量税の還付を受けることができる。したがって この制度によって還付を受けられるときは未経過分の自動車重量税は損害とならない。還付が受けられない場合には、未経過分の自動車重量税については二重支払に等しくなるため事故による損害と認められます。
 ・検査・登録費用、車庫証明費、納車費用、廃車手数料
 検査・登録費用および車庫証明費用は、法定の費用であり、損害と認められます。
 検査・登録手続代行費用、車庫証明手続代行費用および納車費用は、販売店の提供する労務に対する報酬であることから損害と認められるかの問題がありますが、車両購入者は販売店に依頼するのが通常であることから、賠償の対象とすべきであり、裁判例もその傾向にあるといえます。この業者の手数料が認められるときには、手数料に課される消費税も損害となります。
 廃車手数料(300円、道路運送車両関係手数料令)のうち法定の手数料相当額は損害と認められる。業者手数料(消費税を含む)は、上記と同様の理由で肯定される傾向にある。
 ・消費税および地方消費税相当額
事故車両と同程度の車両を取得した場合の消費税等相当額は損害と認められます。
 
 ・自動車税350)
 これは、自動車の所有者に対して課税される道府県税で、自動車の主たる定置場所所在の道府県において課税されるものです。
 廃車となる車両については月割りで課され、廃車した日の翌月からの自動車税の還付を受けることができます。したがって、原則として損害とはなりません。

 ・自賠責保険料
 自賠責保険料は、適用地域別、車種別、保険期間別に決められており、保険期間は、車検期間と極力一致するよう配慮されています(自賠法施行令11条4項、同法施行規則7条)。
 自動車を廃車することによって抹消登録を受けた場合には、責任保険を解約することができます(自賠法20条の2、同法施行規則5条の2、自動車損害暗償責任保険普通保険約款10条)。解約した場合には、解約保険料表または始期前解約保険料表による方法、あるいは日割計算による方法によって算出された保険料の返還を受けることができます(自動車損害賠償責任保険普通保険約款13条2項)。したがって、損害とはなりません。

電話する
タイトルとURLをコピーしました